全国地域づくり実践事例を紹介! 農山漁村ナビ

100年前から作られてきた魚の燻製保存食「梶賀のあぶり」で経済活性

三重県尾鷲市 株式会社梶賀コーポレーション

HOME > 事例一覧 > 100年前から作られてきた魚の燻製保存食「梶賀のあぶり」で経済活性

日々の写真館

目次へ

事業概要

 三重県尾鷲市の最南端に位置する梶賀町は、定置網「梶賀大敷」が基幹産業の漁業の町です。人口は、最盛期の1/5ほどに減り現在は178名、高齢化率は6割を超えています。多くの人が、定置網業や刺網業、そして干物などの水産加工品を作る食品製造業に従事しています。
 こんな小さな漁師町に、住民が自慢する郷土食があります。それは、周辺地域の人たちから、町の名を取って「梶賀のあぶり」と呼ばれる魚の燻製保存食です。市場では値のつかない小魚や傷物の魚を漁師が家に持ち帰り、塩だけで味付けをし、軒先で熾した薪火で2時間ほどじっくり燻し焼いたものです。もともとは、電気もガスも道路さえも通らなかった時代に、海況が悪くなると外部から食品が届かない事態に対処するために漁師の知恵で生まれた保存食です。
 今も、全て手作業で行い、塩以外の調味料をはじめ、保存料や添加物を一切使わない昔ながらの安全・安心な食べ物です。電気もガスも道路も通って便利になった今でも、梶賀町民がこだわって昔ながらの手作業で作り続ける一品は、100年以上生き残ってきたシンプルなのに梶賀にしかない芳醇な味です。
 今も、サバの幼魚やムツの幼魚など、他の土地では捨てられてしまうような小魚を、美味しいのに勿体ないと、あぶり続けています。また、この燻し焼きの製法を、ブリ、サバ、ソウダカツオ等の市場価値のある魚にも適用し、様々な魚種を商品化してきました。
 「魚と塩だけの調理でこんなにも深い味わいで魚が美味しく食べられるものなのか!」この感動を全国の方々に味わっていただきたく、梶賀町民が出資して地域会社・梶賀コーポレーションを組成しました。定置網に次ぐ町の基幹産業に育て、事業熱意のある若者も活躍できる梶賀町にしていきます。

目次へ

主力商品・イベント

 「梶賀のあぶり」の出発点である「鯖子(さばこ)のあぶり」。10cmに満たないサバの幼魚の頭と内臓を丁寧に取り除け、塩で味付けをしたものを竹串に刺していきます。そして、桜や馬目樫で熾した薪火の上で、2時間ほどかけてじっくり焼き上げます。まだ脂がのる前のサバの幼魚には、ぎゅっと味が濃縮されており、噛めば噛むほど味が出てきます。そこに付いた煙の香りは、アルコールのお供にピッタリ。日本酒との相性抜群です。
 一方で、「捨てられる魚が勿体ない」という精神から始まった「梶賀のあぶり」の中では異色の「鰤(ぶり)のあぶり」。梶賀町の定置網・梶賀大敷の年間水揚げの多くを稼ぐブリは、梶賀経済を支える高級魚であり、梶賀町が位置する尾鷲市は、日本三大ブリ漁場の1つに数えられるほどのブリの産地です。そんなブリを、同じ製法で燻し焼いた「鰤(ぶり)のあぶり」は、梶賀町民が最初は「ブリをあぶるなんて勿体ない!」と言ったほどの一品。しっかり脂ののったブリを2時間かけて燻し焼くことで、無駄な脂を落としつつ、身はジューシーでふっくらとした味わいです。「塩しか使ってないの?」と驚かれる濃厚な味を楽しめます。なお、「鰤(ぶり)のあぶり」では、年間を通して脂ののった高品質なブリをご提供できるよう、尾鷲湾を中心として大事に育てられた養殖ブリを使用しています。

目次へ

活動背景

 人口減少、少子高齢化、一次産業の衰退、後継者不足、廃業続き、新規起業ゼロ・・・・。梶賀町も、数ある地方の弱小集落と同じ状況にあります。しかし、一つ異なるのは、「梶賀のあぶり」という、町民が愛し、誇りにしてきた郷土の味があることです。もともとは、漁師が家の作り置きのおかずとしていたものであり、売り物にするどころか、他人様に渡すようなものでもありませんでした。しかし、梶賀町民は、姑から嫁へとそれぞれの家のこだわりの製法を伝え続け、子は家の味を愛してきました。子供が梶賀町を出て他の町に住むようになっても、「あぶりが食べたい」という声は続き、親は自分で作った「あぶり」を子供のもとに送ってきました。
 「他の町にない味で、美味しいと思ってもらえるのであれば、商品として成り立つのではないか」。梶賀町の町おこしに積極的だった当時の梶賀区長が思い立ち、梶賀婦人会の協力を得て、「梶賀のあぶり」の商品化に取り組んで10年。少しずつ近隣地区で知名度があがり、常連のお客様もつくようになってきました。梶賀町民有志が集まって「梶賀まちおこしの会」を結成し、三重県内だけでなく、首都圏や関西圏のイベントにも「梶賀のあぶり」を販売しに出店できるようになりました。
 次に目指したのは、「梶賀のあぶりで若者が生計を立てられるような産業にしたい」ということ。梶賀婦人会長の強い思いから、全国に人材募集を行い、地域おこし協力隊として30代と20代の2名の人材を梶賀町に呼び寄せました。梶賀まちおこしの会の役員と地域おこし協力隊とで、「梶賀のあぶり」の商品としての価値を高める改善を行い、また販路拡大事業戦略を策定し、「稼げる仕事」にできるように仕組みづくりを行ってきました。
そして、平成29年に成人梶賀町民の1/4以上が出資し合って、株式会社梶賀コーポレーションを設立しました。現在、梶賀町民がパートとして働き、また原材料の仕入れ元として取引関係にあります。地域おこし協力隊2名にも給与を払えるまでになりました。小さな漁村・梶賀町に、新たな経済活動の核として根付こうとしています。

目次へ

ポイント・効果

 パートで働く人たちも、取引先の人も、皆60歳以上。年金があるため、この会社に期待しているのは生活費の稼ぎではありません。「元気なのに暇を持て余す老人にはなりたくない。働ける間は働いて張りのある日々を送りたいし、仲間と一緒に活動しているのは楽しい。そして、やっぱりお客様に『美味しい』と言ってもらえることが何よりも嬉しい」。梶賀町のお母さんの生きがいになっています。
 東京や大阪での販売イベントは、道中、旅行のような賑やかさ。「夜は何を食べようか」と盛り上がりながら、出店中は一生懸命お客様に梶賀町の郷土の味をPRしています。そして、お土産を買いに入ったお店では、「燻製のこんな商品あるよ」「魚の加工品なのに賞味期限が1年もあるよ」「この宣伝文句イイね」など、他社商品をチェックし市場調査を熱心に行います。素朴な「梶賀のあぶり」は、このような素朴なお母さんの努力の土台の上にあります。
 地域おこし協力隊として梶賀町にはいった2人は、任期満了後も梶賀町に残り、「梶賀のあぶり」の事業拡大に取り組むだけでなく、梶賀町の産業や文化等についての幅広い情報発信を行い、梶賀町外、尾鷲市外、三重県外の事業者さんとも連携の輪を広げて、地域の良いものを多くの人に知ってもらう取り組みを進めています。
 梶賀町の情報発信が増えたことで、梶賀町で生まれ今は遠くの地に住む梶賀出身者との交流も進んでいます。テレビや新聞、雑誌に梶賀町のことが出ると「梶賀のこと見たよ」と親御さんへの電話が入ったり、「今度帰るわ」と帰省が増えたり、「土産に『あぶり』持って帰るわ」と営業マンになってくれたり。梶賀町を中心とするコミュニティの動きも活発化しています。

目次へ

活動規模

 株式会社梶賀コーポレーションは、役員5名、パート3名、ボランティア約20名、株主38名で活動しています。また、取引先として、町内の原材料仕入先は3事業者あり、このうち梶賀大敷株式会社は乗組員20名の定置網を操業、残り2事業者は個人事業主で、お手伝いを5名~10名ほど雇っています。梶賀町民の1/3ほどが「梶賀のあぶり」の事業に何らかの形で関わっていることになります。
 従業員や取引先には、「梶賀のあぶり」の生産量拡大・販売量拡大に取り組んでもらい、平成27年度に比べて平成29年度は、売上高が約5.5倍、利益もしっかりと確保できる事業構造になり、法人化初年度の平成29年度から、株主に対して配当を行いました。
 また、株主には「梶賀のあぶり」を株主優待価格で購入できるようにし、「梶賀のあぶり」を手土産やお歳暮などに使ってもらうことで、積極的に営業マンになっていただけるように仕組み化しています。

目次へ

地域資源

 梶賀町の基幹産業である定置網・梶賀大敷で水揚げされるサバ、カツオ、カンパチ、ワカナ、ムツ、イサキ、タカベ、シイラ、カマスなど、多種多様な魚を使っています。梶賀大敷だけでは調達できない場合は、周辺の熊野市や紀北町の魚市場まで買い付けに行きます。季節の魚を使うことで、漁師町の季節感を楽しんでいただけるように心がけており、縁のない遠隔地からの仕入れは行っていません。
 ブリだけは、尾鷲湾を中心に養殖されている魚を使用しています。これは、天然ブリは価格変動が大きく、また時期により味に大きなばらつきがあるため、安定して脂がのっているブリを調達できるようにするためです。尾鷲市の養殖会社が尾鷲湾で大切に育てたブリであり、養殖ブリも胸を張って美味しいと言える尾鷲の味です。

目次へ

今後の展開

 現在は、生産活動に従事しているのは60代、70代の女性陣です。ベテランの技術は頼りになりますが、5年後、10年後を想定すると、後継者問題に早急に取り組まなければいけません。梶賀コーポレーションの正社員を募集するという方法ではなく、梶賀コーポレーションの取引先になる気概のあるモノづくり志向の人材を求めています。新天地に希望を持つIターン・Jターン人材、梶賀町に思い入れのあるUターン人材、それぞれに可能性を見出しています。
 梶賀コーポレーションでは、漁村でのモノづくりに興味がある若者への情報発信をしている他、そのような移住希望者が実際に出てきてくれた場合に、きちんと食べていける職場環境づくりに取り組んでいます。技術継承、技術指導といった職人としての育成の協力人材の確保、商品の仕入れや販路確保といったモノづくり事業の経営面での支援策の構築など、バックアップ体制を整えています。さらに、他所の土地から縁のない梶賀町に移住してくる人と梶賀町民との円滑な関係構築のために、地域おこし協力隊出身者2名が先陣を切って移住者という存在が梶賀町に根付けるように実験台となって取り組んでいます。
 Uターン人材候補者に対しては、梶賀町の良いところは残しながら、新しい事業に挑戦する前向きな今の町の姿を知ってもらえるよう、盆暮れの帰省時期でのイベント企画の他、Facebook等SNSでのコミュニティづくりを行っています。


目次へ

困難だったこと

目次へ

基本情報

■名称 :

100年前から作られてきた魚の燻製保存食「梶賀のあぶり」で経済活性

■住所 :

三重県尾鷲市梶賀町312‐2

■TEL :

0597‐27‐3355

■管理団体 :

株式会社梶賀コーポレーション

■代表者名 :

■WEBサイト :

http://aburi.wp.xdomain.jp

目次へ

公開トーク

新規投稿

書き込みするにはログインする必要があります

利用者自身の個人情報を明らかにする行為や、 個人情報の開示に繋がる恐れが高いと判断される行為、
または他者のプライバシーの侵害に 繋がる書き込みは、ご遠慮ください。